2014年3月10日月曜日

俺の妹がこんなに可愛いわけがない 桐乃はなぜ妹が好きなのか

今回は桐乃が妹を愛する理由ついての考察です。

前提として明確な表現

第一巻で
「わ、分かんない!」(中略)「……あのね……あのね……じ、自分でも……分かんないの」
と語るように、桐乃が妹作品を好きになった理由について当初は明言されません。
この理由というのが、推理小説のハウダニットのように物語の原因を巡る謎となっており、桐乃がその「動機」を自覚することが一つの結末への鍵となっています。

原作でも物語を読み進めれば分かる構成になっていますが、
伏見つかさ先生が脚本を担当したアニメ第二期の13話が非常に分かりやすいですね。
この回は、原作11巻を大幅にカットしつつ、なるべくニュアンスを削らないように構成されています。
11巻は推理小説に例えるなら、探偵が事件の概要を語るシーンに相当する非常に重要な巻ですので、やはりオリジナルに比べると勿体無いぐらいに情報が落とされている訳ですが、結末へ至る為の最低限必要な項目だけは明記してあるという点で構造は理解しやすいでしょう。

13話の中で、麻奈実が兄妹恋愛を否定する言葉のカットから、彼女がエロゲーを発見してそれにハマる過程が描かれています。
つまり、妹ゲームにハマった原因は、京介への報われない思慕の代償行為であると表現されている訳です。
兄と妹が恋愛することが肯定される物語を通じて、否定された自己を再度肯定しようとしているという解釈です。
(アニメと原作を混ぜて解釈するのは、あまり好ましい行為ではないのですが、私がアニメから入ったせいで内容自体が混合されているのでご容赦下さい)


深層意識下の代償行為

ここまでは、作中で明確に描かれた要素ですが、それ以外にもう一つの要素が考えられる、というのが今回の趣旨です。

それは11巻で
「(前略)『背伸びしていた兄貴』のことを、カッコいいって思ってた。頭がよくて、足が速くて、誰よりもがんばってて、自分のことを特別な人間だと思っている――そんな人にあたしもなるんだって、憧れててた」
(中略)
「ーーでも、そんな人はいなかったんだよね」
このそんな人はいなかったと語られる「過去のお兄ちゃん」への憧れです。
そして、この理想化された存在しない「お兄ちゃん」には、上の言葉には語られないもう一つのが付加されているます。
それは「妹である自分を異性としても愛してくれる」というものです。
桐乃からの一方的な思慕を、理想の兄は受け入れてくれる、積極的肯定してくれると思うようになっていくわけです。
これは「自分がそうであるならば、彼もまたそうであって欲しい」という欲求が「そうであるはずだ」と変形した都合の良い理想です。
しかし普通ならば現実と衝突し、挫折を経験するであろうその理論を、現実の京介が無気力化して舞台から降りたことで、理想の「お兄ちゃん」を追い求めた彼女は一人で再現することになります。

桐乃は、小学校の頃に一番番足が速かったことを目標に、陸上で海外遠征までしてしまう。
学校のしおりの表紙に写真を載せたことを目標に、プロのモデルになってしまう。
彼女の理想の「お兄ちゃん」は当時の京介を超えて成長していきます。
そして「お兄ちゃん」が成長したならば出したであろう結果を、己をもって再現するのです。

彼女の中だけの理想であり、現実の京介が持ち得なかったどのような要素も獲得できる存在。
それは多くの少女が幼少期に抱く、究極の理想化された異性、白馬の王子様願望に近いものですね。
そして「そんな人にあたしもなるんだ」という理想へ同一化しようとする桐乃には「お兄ちゃん」と同じように妹への愛情が生まれた訳です。
(完全な余談ですが、この思考ロジックは少女革命ウテナの天上ウテナを彷彿とさせます)

現在の京介が3年前以降麻奈実の影響下にあるように、現在の桐乃は過去から抱き続けた理想の「お兄ちゃん」の影響下にある訳です。

作中の人生相談を通して、桐乃は徐々に現在の京介を肯定できるようになっていきます。
その中でも、理想の「お兄ちゃん」を再現する自分の行為と、現在の兄貴である京介の存在が初めて本格的に衝突するのは、海外で挫折を経験し、彼女を止めるために海外まで追いかける場面だと思います。
同一人物でありながら、違う2人の兄を見ていた桐乃にとって、「頑張らなくていい」と過去の「お兄ちゃん」を否定する言葉で自分を連れ帰ろうとする京介を見ることで、ようやくその分割された2つの兄像が同一人物であると認識せざるを得なくなる。
そして、完全に合一するのは11巻の三人の会話のシーンで過去の事情を知り「そんな人はいなかった」と自身の言葉にして認めるまでかかるわけです。

そうした彼女の理想とは違い、京介が秋美に対して
「(前略)三年前から妹のことが好きだったの?」
「いや、三年前に好きだったやつといま好きなやつは違うよ?」
と語ったように、桐乃の理想であった当時は妹への愛はあくまで家族愛でしかなった。
しかし、京介は段階的な変化ではなく、秋美の事故をきっかけに別人のようになることで、幼かった桐乃の中では「お兄ちゃん」とは別の人間として分割されてしまった。
だから、ひとり歩きした理想を追いかける彼女には、その齟齬を埋める機会がなかったのです。

現実に「お兄ちゃん」が存在しなくなった桐乃は、理想の中の「お兄ちゃん」が自分にそうしてくれるはずだったように、彼の代わりに妹を愛する。
彼女の意識はエロゲーの中の妹と自分を重ねあわせながら、同時に兄にもまた感情移入しており、その双方が同時に桐乃自身なのです。

理想の兄となってゲームをプレイして、理想の妹である自分を愛する。
ゲームのヒロインに「お兄ちゃん大好き」と言われて悶絶する。
それはipodに吹き込まれた未来の自分へ向けたメッセージと本質的には同じものです。
才能ではなく努力によって「お兄ちゃん」としての自分を作り上げた彼女にとって、それを褒めて肯定してくれる存在はエロゲーの中の「妹」としての自分だけなのです。


総論

彼女にとってエロゲーをプレイするということは、自身で自身の尾を飲み込むウロボロスの蛇のように、架空の「お兄ちゃん」になって自分を愛する自己愛の円環構造となっている。

そんな幼少期から報われぬと分かってしまった自分の願望を、複雑な代償行為に仮託せざるを得なくなってしまったのが桐乃という人物なのです。



つまり桐乃って超かわいいですね。

1 件のコメント:

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